1-5 コード(和音)とは

さて、コード(和音)のお話です。Cメジャー、トライアド、ダイアトニックコード、ドミナント、テンション、アボイドなどなど。様々な専門用語が登場して嫌になりますが、これまでの音程や調性の話を踏まえて考えると理解しやすいと思います。

4種類のトライアド(三和音)

コード、日本語で言うと和音ですが、これは同時に鳴っている音の組み合わせです。その様々な音の組み合わせそれぞれを区別するためにコードネームがつけられています。
一般的なコードは、ある土台となる音に3度上、3度上と音を重ねて出来ています。この重ねる土台となる音(1番下の音)をルート(根音)と言い、そこから2つ重ねて3音にしたものをトライアド(トライアングル△と同じ語源だと思うとわかりやすい)日本語で三和音と言います。

ルートから3度上、そしてそこからさらに3度上(ルートからみると5度上)と重ねるわけですが、3度には長3度と短3度がありました。(詳細は 1-3 音程の表し方と特徴 )ということは[長-長][長-短][短-長][短-短]の4種類の組み合わせが考えられます。その4種類がこれです。

4種類のトライアド(三和音)

上図の4つのコードはルートがド(C)のトライアドです。長3と書いているのは長3度音程、短3は短3度音程です。
1番左のコードを見てみましょう。まずルートCがあり、そこから長3度上にミ(E)があり、さらに短3度上にソ(G)があります。このようにルートから見て、長3度、短3度と重ねたコードをメジャートライアド(長三和音)と言います。
今回の場合はルート音がCなのでシーメジャートライアド、一般的にはC(シー)と略して表現されます。CにM(メジャー)を加えてCM(シーメジャー)と書く人もいます。コードネームは人によって書き方が違うのでややこしいす。詳しいコードネームの付け方については後ほど解説します。

その右側のCmのコードはルートから見て短3度、長3度と音を重ねています。これをマイナートライアド(短三和音)と言います。マイナーの場合はルートの右側に小文字のmを付けて表します。大文字のMにしてしまうとメジャーを表すので注意が必要です。
メジャーは英語のmajorで、「より大きい、主要な、長音程」といった意味、マイナーはminorの「より少ない、目立たない、短音程」といった意味です。両方mなのでややこしいですが大文字Mはメジャー、小文字mはマイナーと覚えるしかなさそうです。

その右側はルートから見て長3度、長3度になっています。これをオーギュメントトライアド(増三和音)と言います。オーギュメントはルートの横にaugと書いたり+と書いたりします。同じコードでも数種類の書き方や言い方があります。ホントやめてほしい。
augmentは英語で、「増強 増やす」といった意味です。発音的にはオーグメントゥの方が近いそうですが、日本の音楽で使われる場合はもっぱらオーギュメント。

「長3度-長3度ときてるのになぜ増三和音なんだ?」というのが疑問だと思うのですが、この場合の「増」は増5度音程の「増」を表しています。ルート(ド)と3つ目の音「ソ#」の音程が増5度になっています。長3度・長3度とくれば増5度になります。

オーギュメントトライアドにはもう1つ特徴があって、先程のトライアドの3つ目、ソ#にさらに長3度の音を重ねてみてください。
シ#になると思います。シ#ってつまりドですよね。ルートから1オクターブ上のド。長3度は半音換算だと4半音なので、それが3つで12半音、つまり1オクターブということになります。ということは、オーギュメントトライアドは1オクターヴを長3度で3等分したようなコードと言えます。

1番右のコードはルートから見て短3度、短3度になっています。これをディミニッシュトライアド(減三和音)と言います。お察しの通り減5度音程を含む音程です。ルート(ド)からソ♭までが減5度になります。短3度、短3度とくれば減5度ですね。
diminishは英語で、「減少する 減らす」といった意味です。
実はディミニッシュにもオーギュメントのような特徴があって、こちらは短3度音程しか出てきません。これについては後ほど解説します。

オーギュメントコードの増5度音程は半音換算で8半音。これは短6度と同じなので不完全協和音程。対してディミニッシュコードの減5度音程は半音換算で6半音。これは不協和音程です。ディミニッシュコードは不協和音程を含む不安定なコードというのも特徴です。

ルートからの並びルートと5度の音程呼び方
ルート-長3度-短3度完全5度メジャートライアド
ルート-短3度-長3度完全5度マイナートライアド
ルート-長3度-長3度増5度オーギュメントトライアド
ルート-短3度-短3度減5度ディミニッシュトライアド

大事なのは長=メジャー、短=マイナー、増=オーギュメント、減=ディミニッシュ!
これです!
メジャーコードやマイナーコードはギターを弾かない方でも結構馴染みがあると思います。しかしオーギュメントやディミニッシュと聞くと、とたんに「はぁ?」って思いませんか?でも音程の増や減のことだとわかるとなんだそんなことかって感じです。
この[オーギュメント=増][ディミニッシュ=減]を覚えておくと、ここから後のコードの話も理解しやすいと思います。

「長-短」がメジャー、「短-長」がマイナーってのが納得いかないかもしれませんがそこはスルーしましょう。

ハ長調のダイアトニックコード

ハ長調ダイアトニックコード(トライアド)

ハ長調ダイアトニックコード(セブンスコード)

ダイアトニックコード、日本語にすると主要和音。ハ長調の場合、構成音の「ドレミファソラシ」それぞれをルートとし、それぞれに3度上、3度上と音を重ねて出来たコードをダイアトニックコードと言います。ルートに2つ重ねて3つの和音にしたものが先程出てきたトライアド(三和音)、ルートに3つ重ねて4つの和音にしたものをセブンスコードと言います。セブンスコードは4つ目の音がルートから数えて7度にあたるのでこの名前がついています。

ダイアトニックコードはその調の構成音のみで構成されているので、これらのコードのみで作曲すればそんなにおかしなことにはならない、基本となるコードです。ハ長調の曲を作ろうと思ったらこのコードを使えば良いわけですね。ただ、ダイアトニックコードだけで作られた曲は単純で面白みにかけるということにもなりますので、ダイアトニックコードをベースに他のコードをアクセントに加えていくと良いと思います。

調が変われば当然ダイアトニックコードも変わるわけですが、同じ長調であればM,m,m,M,M,m,dimの並びは変わりません。これは後で表にしたいと思います。

コードネームは音程を記号にしたもの

ハ長調ダイアトニックコード(セブンスコード)

先程と同じ図ですが、長3は長3度、完5は完全5度、減5は減5度など、音程を度数で書いています。
実はコードネームというのはこの度数の関係(音程)を記号として表したものなのです!逆に言うと、コードネームを見れば構成音の音程がわかるということです。
一部例外はありますが、基本的にコードネームは下記の図に構成音を当てはめていくと出来上がります。

コードネームの記述の仕方

コードの8割~9割はこれでカバーできます。実際にやってみましょう。

ハ長調ダイアトニックコードの記述

ハ長調のダイアトニックコードに現れるパターンをいくつか抜き出してみました。

真ん中の「Dm7」で見てみましょう。五線譜を見ると、まずルート音がレなので「D」。
次にルートから3度の音ファは短3度にあたりますので「m」を書きます。小文字「m」はマイナー(短)、大文字「M」はメジャー(長)でした。この段階で「Dm」。
次に5度を飛ばして先に7度。7度ドはルートから短7度にあたるので「7」と記述します。「Dm7」
次は5度のラ。完全5度の場合は省略で何も書かないのでそのまま。「Dm7」。
5度は3度(m)の上に書いたり7度の後ろに書いたりします。コードネームを言う時もルート、3度、7度、5度、テンションノートの順に言います。ややこしい。

最後にテンションノート(テンション)というものを書くのですが、これは9度・11度・13度の音のことです。ダイアトニックコードには出てきませんので常に空欄です。テンションについては後述します。
ということでこのコードは「Dm7」(ディーマイナーセブン)ということになります。

次に1番左のCの例を見てみましょう。
ルートがドなので「C」
3度ミは長3度にあたるので「M」と書きそうですが、長3度の場合は省略するのでなにも書きません。「C」のまま。(Mと書く人もいます)
7度の音はなし。「C」のまま。
5度ソは完全5度なので省略。ここでも「C」のまま。
テンションもないのでこのまま「C」ということになります。

もう1つ、ややこしそうな右端のコードを見てみましょう。
ルートがシなので「B」
3度レは短3度なのでマイナーコード。「Bm」
7度は短7度なので「7」。「Bm7」
5度は減5度です。いろいろな書き方がありますが「♭5」を書いて「Bm7♭5」
テンションはないのでこのまま「Bm7♭5」(ビーマイナーセブンフラットファイブ)

ビーマイナーセブンフラットファイブ

なんかかっこいいので2回書いてみました。
勘違いしそうなのが、(♭5)はあくまでも減5度を表しているわけで、5度の音に♭がつくわけではないということです。コード構成音を確認してもらうと、5度の音はファ♭ではなくファになっていると思います。フラットファイブという響きが格好良くて2回も書いてみましたが、ややこしいなと思ったら(-5)を使えば良いと思います。

「♭5は減5度なのでディミニッシュじゃないの?」というところが疑問だと思います。上図では(ビーハーフディミニッシュ)と書いていますがそこを解説します。

ディミニッシュとハーフディミニッシュ

ディミニッシュとハーフディミニッシュ

ディミニッシュ=減でした。
1番左のコードは減5度音程を含むディミニッシュトライアドで別名減三和音。「4種類のトライアド」のところで出てきたと思います。

1番右のコードはディミニッシュセブンスコード。こいつがディミニッシュの完成形とでも言いましょうか、減5度・減7度を両方含んでいます。ディミニッシュの名を冠するにふさわしいコードではないでしょうか。
ポイントはm(マイナー)と(♭5)の文字が省略されているということです。mが書いてありませんがルートから長3度ではなく短3度、(♭5)は書かれていませんが完全5度ではなく減5度です。

これはおそらく、減7度になるのは短3度、減5度のケースだけなので省略されているのではないかと思います。dim7と書けば短3度(m)、減5度(♭5)は確定なので言わずもがな。便利といえば便利。

実はディミニッシュセブンは全てが短3度の積み重ねでできています。減7度(この場合ラ♭)に短3度を重ねるとド♭(=シ)なのでオクターヴ上のシに戻ってくると思います。つまりディミニッシュセブンは1オクターブを4等分したような特徴的なコードといえます。

トライアドのところで出てきたオーギュメントトライアドとセットで、

オーギュメントトライアド=1オクターヴ(12半音)を長3度(4半音)で3等分したコード
ディミニッシュセブン=1オクターヴ(12半音)を短3度(3半音)で4等分したコード

と覚えておくとわかりやすいですね。

図のところに「B小さな○」のように書いていますが、この小さな○でディミニッシュを表すこともあります。

では真ん中、ハ長調のダイアトニックコードにも含まれるビーマイナーセブンフラットファイブですが、こちらとディミニッシュセブンの違いはファとラの音程が長3度になっていて、ルートからラまでの音程が減7度ではなく短7度になっていることです。減5度・減7度のディミニッシュセブンと比べると半分(減5度のみ)なのでハーフディミニッシュという呼ばれ方をします。なんかハーフディミニッシュもかっこいいですよね。マイナーセブンフラットファイブと甲乙つけがたいところです。
ハーフディミニッシュは○に/を重ねたような記号でも表せます。これもディミニッシュを半分にしてるようでイメージしやすいと思います。

オーギュメントメジャーセブンとオーギュメントセブン

ついでにオーギュメント。

オーギュメントとオーギュメントセブン

1番左は既出のシーオーギュメントトライアドです。
そこへ短3度、ルートから数えると長7度(M7)の音を重ねるとシーメジャーセブンシャープファイブ(中央)。別名シーオーギュメントメジャーセブン。オーギュメント(増5度)→メジャーセブン(長7度)と、これまでの「7度→5度」の順番と逆になるのでわかりにくいです。Why American people ?

オーギュメントは増5度音程を現していると考えるとわかりやすいでしょうか。7度は既出の長7度(M)と短7度(省略)。ディミニッシュよりは単純な気がします。

こうやって整理してみるとコードネームなど赤子の手をひねるようなものではないでしょうか!省略されるものがあるのでややこしく感じますが本質がわかれば容易いものです。

  • 長3度は何も書かず(Mを省略)、短3度はm
  • 短7度は7(mを省略)、長7度はM7
  • 完全5度は省略、減5度は(♭5)、増5度は(#5)or オーギュメント(aug)
  • ディミニッシュ(dim)は減5、ハーフディミニッシュ(m7(♭5))は減5・短7、ディミニッシュ7(dim7)は減5・減7

ここら辺りをおさえておけばそうそう戸惑うことはないと思います。

G7(ジーセブン)は、省略(長3度)、7(短7度)、省略(完全5度)。
Gm7(ジーマイナーセブン)は、m(短3度)、7(短7度)、省略(完全5度)。
GM7(ジーメジャーセブン)は、省略(長3度)、M7(長7度)、省略(完全5度)。

この違いがわかればあとは増5度・減5度。

コードは人によって言い方や書き方が違うのでややこしく感じます。「C」と書けばドミソのトライアド「シー」ですが「シーメジャー」という人もいます。「7」は「セブン」と言ったり「セブンス」と言ったり。「M7」は「maj7」や「△7」と書く人もいます。増5度は(#5)・(+5)・aug。カッコも付いたり付かなかったり。
そのあたりがややこしいのですが、一応覚えておいて、自分が使う分には使いやすいものを使えば良いと思います。

では後回しになっていたテンションノートですね。

9度・11度・13度を表すテンションノート(テンション)

9度や11度など聞き慣れない音程が出てきましたが、オクターヴの8度を超える音程を複音程と言います。これまで出てきた8度以下の音程は単音程と言います。
複音程の中で9度、11度、13度の音をコードに加える場合があります。この加える音をテンションノート(テンション)と呼び、テンションを加えたコードをテンションコードと呼びます。
テンションは緊張という意味の英語で、その名の通り緊張感を与えるために使われます。

テンションとしてコードに使われるのは9度、11度、13度のみです。なぜなら、10度はオクターヴと3度、12度はオクターヴと5度、14度はオクターヴと7度と考えられるので、コード構成音と同じになります。そして15度はまた一周りしてルートの2オクターヴ上になります。ですので残るのは9度、11度、13度というわけです。

テンションを含む複音程にも長短系と完全系があるのですが、9度は1オクターヴと2度、11度はオクターヴと4度、13度はオクターヴと6度と考えます。すると、9度は2度と同じ長短系、11度は4度と同じ完全系、13度は6度と同じ長短系ということになります。

9度(ナインス)、11度(イレブンス)、13度(サーティーンス)は、セブンスコードに付け足すようなイメージですので、全てを堆積する必要はありません。9度と13度にだけ加えたり、11度のみ加えるといった用い方ができます。

テンションは自由に加える事ができるわけではなく、コード構成音とぶつかる音は避けた方が良いとされています。この避けたほうが良い音をアボイドノート(アボイド)と言います。アボイドは英語で「避ける・回避する」といった意味です。
どれがテンションでどれがアボイドなのかを見極めるのは難しいのですが、コード構成音の半音上(短2度)の音はアボイドになります。しかし例外があったり、そもそもアボイドは使ってはいけないわけではなく、瞬間的に使うなど場面によっては問題なく使用できます。「避ける音」というよりは「注意して使う音」と解釈したほうが良さそうです。
ここまでくると「アボイドなんて気にする必要なくね?」と思わなくもないです。
和音の響きを聴いて、おかしいと思えば直せばいいですし、自分が良いと思うならそれはそれでいいのではないでしょうか。(共感が得られるかは別として)

それではハ長調のダイアトニックコードにテンションを加えてみましょう。

ハ長調テンションコード
コードネームの記述の仕方

ハ長調のダイアトニックコードにテンションを加えてみました。実際にはこんなにガンガン加えないと思いますが、理論的には可能だという感覚で見て下さい。
CM7の場合、9thと13thを加えてCM7(9,13)とすることもできますし、9thのみ加えて「CM7(9)」、13thのみを加えて「CM7(13)」と、特定の音だけ加えることもできます。
ただ、この「CM7(13)」で9thと13th両方を含んだ意味で表記されることもあります。また、書き方も様々で「CM7(13)」を単に「C13」と書く人もいます。つまりC13でド・ミ・ソ・シ・レ・ラ(アボイド除く)を表すわけです。燃費良すぎ。
1番右のコードには短13度が入っているので(♭13)が登場しています。

テンションでは(-9)や(+11)といった書き方はあまりされないようで、(♭9)や(#11)のように書かれることが多いようです。

テンションについては、

  • テンションは9th(オクターヴ+2度)、11th(オクターヴ+4度)、13th(オクターヴ+6度)
  • 使い方に気をつけるアボイドという音がある
  • 長9度→9、完全11度→11、長13度→13で省略

このあたりを抑えておけば良いのではないでしょうか。ここまでくると論理より感覚を重視する方が良い気がします。

ここまでで8割~9割のコードを網羅できるのではないかと思います。次回で残りのコードをご紹介したいと思います。