1-3 十二平均律を元にした音程(度数)
~もくじ~
音程の表し方(全音と半音)
近年の音楽はほとんど全てが「十二平均律」を元に作られています。
十二平均律とは1オクターブを12等分したもので、要するに「ド・ド#・レ・レ#・ミ・ファ・ファ#・ソ・ソ#・ラ・ラ#・シ」です。
鍵盤にして番号を振るとわかりやすいと思います。そして、音の高さの隔たり(音程)を、「全音・半音」といった表現をします。鍵盤上の隣の音(黒鍵含む)との音程は半音です。半音2つ分離れると全音です。「全音=半音2つ分」とですね。
気をつけたいのは「ドとレ」や「レとミ」の音程は全音ですが、「ミとファ」や「シとド」の音程は半音というところです。「ドレミファソラシ」の音程は一律ではないということですね。
音階…音を音高により昇順あるいは降順に並べたもの。
音高…ピッチ。音の高さ。
音域…音高の範囲。
音程…二つの音の高さの隔たり。
Wikipedia
音程の表し方(度数)
全音と半音という音程の表し方の他に「度数」という表し方もあります。これは鍵盤で見るより五線譜で見たほうがわかりやすいと思います。
ポイントは同じ高さの音の「ド」と「ド」は0度ではなく1度というところです。音程差がない、同じものなのに0ではなく1。誰が決めたのでしょうか。しかしこれさえ気をつければあとは簡単です。ドとレなら2度、ドとミなら3度、ドと1オクターブ離れたドは8度ということになります。
ド…レ…ミ…と、指を折って数えていけばそれがそのまま度数というわけです。ミからラならミ…ファ…ソ…ラで音程は4度です。基準となる最初の音も含めて数えるというのがポイントです。なぜならば0ではなく1だから。
ここで出てくるのが「じゃあドとレ#は何度?」「同じ2度でもドとレは全音だけどミとファは半音だよね?」といった疑問です。
それを表すための図がこちらです。
これを見て楽典を投げつけた方も多いのでは。なんとかわかりやすく解説していきたいと思います。
まず「完全系」と「長短系」の2種類に分かれます。1度、4度、5度、8度は完全系、2度、3度、6度、7度は長短系です。なぜ分かれるのか疑問に思うかもしれませんが、そこは後回しにしてとりあえず「あ、分かれるんだ」と納得しておきましょう。
1度・4度・5度・8度なら必ず完全系 、2度・3度・6度・7度なら必ず長短系です。
そして、完全5度という音程があったとしてそれが半音長くなったり短くなったりすることで呼び名が変わります。完全5度から半音短くなると減5度、逆に半音長くなると増5度です。さらに重減・重増とありますがあまり登場しません。
長短系の場合、長3度という音程があったとします。そこから半音短くなると短3度、逆に半音長くなると増3度です。
では完全5度や長3度が半音換算でいくつなのかというと、これは覚えるしかありません。
「ドとソ」を例に考えてみましょう。ドとソはド・レ・ミ・ファ・ソなので5度です。音程を半音で数えていくと7半音(半音7つ分)になると思います。わかりにくい方は↑↑↑↑の「半音と全音による音程」図で数えてみてください。
この7半音の音程の5度が「完全5度」になります。
次にシとファ(ファからシではないことに注意!)で考えてみましょう。
シからファはシ・ド・レ・ミ・ファなので5度です。↑↑ ↑↑ の「半音と全音による音程」図でシを基準にド・ド#・レ…と数えていくと6半音で、完全5度の7半音よりも半音短くなります。この音程が「減5度」です。
要するに7半音の5度が完全5度、6半音の5度が減5度ということですね。
長短系も理屈は同じなので数えて上図に当てはめてみてください。
#や♭がついても考え方は同じです。例としてドとレ#の音程を考えてみたいと思います。ド…レなので2度です。半音換算にすると3半音です。3半音の2度は上図にはありませんが、2半音の長2度より半音長いので増2度ということになります。 (完全音程と長短音程図参照)
ドとミ♭の場合は何度でしょうか。
ド…レ…ミなので3度です。半音換算にすると3半音です。3半音の3度は上図を見ると短3度となっています。ドとナチュラルのミが長3度(4半音)ですのでそれよりも半音短いドとミ♭は短3度で間違いないですね。
ここでポイントとなるのが、先程の増2度と今回の短3度はどちらも半音換算では3半音になるということです。「レ#とミ♭」は呼び方は違えど同じ音ですので当然といえば当然です。同じ音をレ#やミ♭と表現できるように、同じ音程であっても違う度数表現ができるということです。
ですので、○半音だから○度ということを決めつけることはできませんし、2度だからといって必ずしも3度よりも短い音程とは限りません。
- ド、レ、ミ…と数えて何度かを見極める
- 1,4,5,8度なら完全系、2,3,6,7度なら長短系
- 半音換算でいくつになるのかを数える
この順序を守れば度数を間違えることはないと思います。
協和音程と不協和音程
度数で表す音程は協和音程と不協和音程に分類されます。協和音程は更に完全協和音程と不完全協和音程に分類されます。作曲をするうえでこれが結構重要になってきます。
完全協和音程 | 完全1度、完全4度、完全5度、完全8度 ※完全1度と完全8度を特に絶対協和音程と呼ぶ |
不完全協和音程 | 短3度、長3度、短6度、長6度 |
不協和音程 | 短2度、長2度、増4度 、減5度、短7度、長7度、その他 |
なんとなく名前で想像がつくと思うのですが、完全協和音程はその名の通り完全に協和する音程です。同時に音を鳴らした時によく調和します。
不完全協和音程は完全協和音程ほどではないが良く調和する音程です。なにか中途半端な気がしますが美しいハーモニーを生み出す音程です。
不協和音程は調和せず、同時に音を鳴らすと濁った響きがします。
先程、度数のところで「完全系と長短系に分かれる」と言いましたが、1度や5度は完全に協和するので完全系、2度や3度は完全に協和しないので長短系に区別されているんですね。
ここまでの度数と半音の関係、協和音程・不協和音程を表にしてみました。重増・重減なども含めるともっとありますが、とりあえずこれだけ覚えていれば音程に関してはばっちりだと思います。
それではそれぞれの音程を順に鳴らしてみたいと思います。
完全協和音程
完全4度
完全4度音程はどこか東洋的な印象がしないでしょうか?あと4度堆積和音(4度ずつ上に重ねていく和音)はジャズでよく用いられる和音です。
完全5度
安定感のある音程。ただし「連続5度や並達5度は禁止」など制約も多い。なんのこっちゃ。あとは「明るいか暗いかはっきりしない音程」だとか。なんのこっちゃ。
完全8度
ちょうど1オクターヴ離れた音程。こちらも連続8度はダメというのがあったりしますが、オクターヴ・ユニゾン(1オクターヴ離れた同じ旋律)がダメかというとそういう話でもない。ここらあたりはややこしいのでとりあえず無視で。
不完全協和音程
短3度
3度、3度と上に音を重ねる3度体積和音がいわゆるコードといわれるもの。3度、6度の音程は美しいハーモニーを作るのに最適な音程。ずっと続ければ良いというものではないのだけれども。
長3度
よく言われるのが短3度は暗い音、長3度は明るい音。ここらあたりは人それぞれの感性もあるので難しいところ。単に明るい or 暗いだけでなく、穏やかだとか悲しいといった印象もあると思いますし、同じ長3度でも音が違えば印象が違うということもあるのではないでしょうか。
短6度
続きまして短6度と長6度です。いろんな和音を聴いてみて「あーこの響きいいな。」というようなところから曲作りを始めてみると良いのではないでしょうか。
長6度
不協和音程
短2度
不協和音程の登場です。短2度は音程が近すぎて濁って聴こえます。狂った調弦も濁ってますもんね。だからといって曲に登場しないかというと登場します。ただ、連続で聴くのは耐え難いと思いますので使い所ですね。
長2度
先程の短2度よりはいくらかましではないでしょうか。私的には短2度は不快、長2度は不安といった印象です。
増4度と減5度
増4度・減5度のことを三全音(トライトーン)と呼びます。全音3つ分の音程だから。三全音は不協和音程の中でも最も響きが悪い不快なものとされ、大昔は使われなかった音程です。そんなに嫌わなくても。
現代の音楽ではその不協和な音程を有効的に使っています。不安を増長させるような音程です。
短7度
続きまして短7度と長7度です。こちらも濁りを感じますが2度ほどではない気がします。セブンスコードにはこの7度が入っているのでこの名がついています。つまりセブンスコードには不協和音程が存在します。
長7度
聴いてみると、なんとな~く各音程の特徴が見えてくるのではないでしょうか。完全協和音程、不完全協和音程、不協和音程の違い、同じ完全音程でも度数による印象の違いなど、きっちりと「この音程はこうだ!」と言えなくてもなんとな~くの印象、「不協和音程は確かに濁ってるよねえ。」って程度にわかれば十分だと思います。
楽曲は、これらの様々な音程が複雑に絡み合ってできています。不協和音程は濁った音で、その名前からして使っちゃいけないような気がしますが全くそんなことはありません。不協和音程が連続で続くような曲は万人受けはしないかもしれませんが、不協和音程の入っていない曲を探すほうが難しいと思います。
不協和音程の入った和音を不協和音と言ったりしますが、不協和音にもいろいろあって、どこまでが不協和音でどこまでが協和音かというのも実は統一されていません。むしろ、そんなことを決めるよりも、その音をどう感じるかということの方が重要だと思います。
心地よいと感じるのか、不快と感じるのか、例え不快と感じる音でもそれが俺の音楽なんだ!というならそれで良いと思います。
万人受けするかは別として。